「ハマナカは毛糸屋じゃない、手芸屋だ」。先発の毛糸会社からそうかげ口を叩かれた時、今年生誕100年になる創業者・濱中利基男はじつは心の中で拍手喝采していました。
最初に手掛けた商品はバッグの取っ手。器用な利基男は彫刻を施したお洒落な手芸小物やレースを販売しながら、あたらしい手芸糸の研究に寝食を忘れて没頭しました。
天然の毛糸をそのまま売ることは創意工夫にこそ価値を認める彼のプライドが許さない。もっと美しく、もっと編みやすくと家のお風呂場まで使ってできあがった手芸糸が1959年発売の「アンダリヤ」です。
まったくあたらしい風合いと編む楽しさは、もともとものづくりと工夫が大好きな日本の女性たちにまたたく間に広がって一大手芸ブームをまき起こしました。
数種類のアクリル繊維を混ぜてつくった「ボニー」、化学繊維と天然素材のいいとこ取りをして完成させた初めての混紡糸「ハマナカモヘア」も利基男の愛した手芸糸です。